2005年日本国際博覧会開催記念
2005年日本国際博覧会の開催を記念して開催する本展は、「自然とのつき合い方、知恵に学びながら、多彩な文化・文明の共存する社会を創造する」博覧会のテーマを、博覧会会場となる愛知県瀬戸市が誇る「瀬戸陶芸の技と心」をつうじて象徴的に伝えようと、全国4会場で開催する展覧会です。
愛知県瀬戸市の南東部に広がる東部丘陵地域は、古代から現代に至るまで日本の「やきもの」づくりを先導する地として発展し、自然の恵みである大地の土と炎、そして人間の営みとの融合によって生み出された「やきもの」は、世界の陶芸史上類を見ない数々の果実をもたらしてきました。
歴史を受け継ぎながら日本の文化の発展とともに進化を続けてきた瀬戸陶芸は、その芸術性を昇華させ、近代産業の発展とあいまって国内はもとより海外にも旅立ち、現在では、毎年数多くの世界各国の陶芸家が瀬戸を訪れ、国や文化を超えた交流を図りながら、新たな陶芸文化の創造に先導的な役割を担っています。
本展は、その源流から現代まで、陶芸史に独自の存在感を示す多彩な作品によって「瀬戸陶芸」の全貌を紹介する初めての機会となる展覧会となります。国内では1970年の大阪万博以来となる今世紀初めての国際博覧会を機に、瀬戸陶芸の珠玉の作品を一堂に集めた壮大で奥行き深い瀬戸陶芸の世界をご覧ください。
<瀬戸陶芸の始まりと発展Ⅰ 奈良時代-室町時代>
東海地方における陶器(須恵器)生産は、瀬戸窯の母体とされる猿投窯で5世紀中頃に開始され、9世紀前半には日本で初めて植物の灰を釉薬とした灰釉陶器の生産に成功します。そして10世紀後半、その流れを受けて瀬戸窯が成立しました。
瀬戸窯では、12世紀末頃から、灰釉を器面全体に施した今までは異なるやきものが生産されはじめ、さらに13世紀末には新たに鉄釉が開発され、日本で唯一の施釉陶器(古瀬戸)の生産地として発展します。この古瀬戸は、北は北海道から南は九州・沖縄まで全国的に流通していきました。そして、15世紀末になると、須恵器生産以来の窖窯を改良した大窯が登場し、緑釉・黄瀬戸釉・長石釉など様々な釉薬が出現します。
<瀬戸陶芸の多様化Ⅱ 安土桃山時代-江戸時代>
近世初頭の瀬戸は、その主な生産地域を美濃(東濃)地域に移しながら、16世紀後期から17世紀初めにかけて、黄瀬戸、瀬戸黒、志野など新しいやきものを生み出すと共に、連房式登窯の導入により織部が登場します。一方、尾張藩の命により加藤利右衛門を始めとする窯屋が、慶長15年(1610)、美濃地域から赤津村や下品野村へ召還されたことなどから、瀬戸地方における窯業が復興していきました。しかし市場には肥前磁器が進出しており、瀬戸では鉄絵・呉須絵・麦藁手(むぎわらで)・呂宋釉(るすゆう)、桃山陶の復興などの新しい試みで対抗するとともに、江戸時代後期になると、陶石を産出しない瀬戸においても磁器焼成が可能となります。
<瀬戸陶芸の世界への旅立ちⅢ 明治時代>
明治時代に入ると、江戸時代からの鎖国が解け、海外への輸出が可能となりました。輸出振興を図りたい明治政府は、当時欧米で盛んに開催されていた万国博覧会に積極的に参加していきます。瀬戸の窯業家たちも、時代の変化を機敏に感じ取り、海外輸出仕様の華麗で絢爛豪華なやきものを製作し、万国博覧会に出品しています。そして、それらが受賞するなど高い評価を得ていったことにより、数多くの瀬戸のやきものが海外へ輸出されていきました。また、同時期には、染付の顔料となる酸化コバルトや石膏型による成形法など多くの西洋技術が瀬戸に伝わり、今まで培われた技術と相俟って、新しいやきものを作り出すことが可能となっていきました。
<瀬戸陶芸の新たな挑戦Ⅳ 大正時代-現在>
明治時代末期から大正時代にかけて、欧米の新しい美術様式が日本に伝わると、時代に即応した図案や意匠の改良が叫ばれるようになり、これを受けて瀬戸では、いち早く教育機関や民間が一体となって図案の研究が盛んとなります。そしてこの活動は、職人や陶工と呼ばれた製作者たちに、個人の美意識による作品の制作、いわゆる作家的活動を芽生えさせたのです。さらに良き指導者にも恵まれ、職人から作家への意識変換が促進されて、多くの作家集団が生まれ、それらの中から優れた陶芸家を輩出することとなりました。
戦後、先達たちが築き上げた基盤をもとに、会派やスタイルを越えた百花繚乱ともいうべき多彩な活動が展開されます。日本有数の陶芸王国を築き上げたエネルギーは、今日の陶芸家にも脈々と受け継がれ、優れた作品を生み出しています。
住所:瀬戸市西茨町113-3
交通:名鉄瀬戸線「尾張瀬戸駅」下車、徒歩13分
前売り・20名以上の団体・愛・地球博入場券をお持ちの方は( )内の入場料
中学生以下、65歳以上、妊婦、心身障害者は無料
平成16年12月28日(火)~平成17年1月4日(火)、2月8日(火)
重要有形民族文化財を含む瀬戸焼源流の灰釉陶器から現在活躍中の陶芸作家の作品125点を展示 ・展示構成 「瀬戸陶芸の始まりと発展~奈良時代-室町時代~」
「瀬戸陶芸の多様化~安土桃山時代-江戸時代」
「瀬戸陶芸の世界への旅立ち~明治時代~」
「瀬戸陶芸の新たな挑戦~大正時代-現代~」
瀬戸市、NHK名古屋放送局、NHK中部ブレーンズ、中日新聞社
【後援】
文化庁、(財)2005年日本国際博覧会協会、愛知県教育委員会、岐阜県教育委員会、三重県教育委員会、 瀬戸市教育委員会、瀬戸市文化協会
日本通運
[東京展] 平成17年3月9日(水)~平成17年3月21日(月・祝)
日本橋三越本店新館7階ギャラリー
[大阪展] 平成17年4月6日(水)~平成17年4月18日(月)
大阪・なんば高島屋グランドホール
[萩 展] 平成17年4月23日(土)~平成17年6月12日(日)
山口県立萩美術館・浦上記念館
(瀬戸市文化センター内) 電話(0561)84-1093
NHK名古屋放送局事業部 電話(052)952-7070
NHK中部ブレーンズ事業部 電話(052)952-7381