発掘調査
中水野遺跡の発掘調査
中水野遺跡の発掘調査は、特別養護老人ホーム建設工事に伴い、平成27年8月3日から8月25日までの期間実施しました。遺跡は、愛知環状鉄道中水野駅から東へ約600mの地点、瀬戸市中水野町2丁目地内に所在し、東西730m、南北350mの広域に登録され、今回の調査地点は遺跡のほぼ中央付近に相当します。調査面積は、245㎡です。
遺跡は、水野川の左岸に拡がる沖積地に展開し、遺跡の北側には穴田丘陵、南側には水野丘陵が東西方向へ連なります。周辺の遺跡を概観すれば、中水野駅の西側付近の沖積地には、平成9年度に発掘調査を実施した内田町遺跡があり、縄文時代から江戸時代までの遺構・遺物が検出されました。遺跡の北側の穴田丘陵には、古墳時代後期の横穴式石室をもつ円墳が数多く分布し、他に中世城館である大平山城跡なども確認されています。
発掘調査の結果、掘立柱建物(SH01)、竈状施設を伴う遺構(SX01)の他、土坑、ピット、そして風倒木の痕跡なども検出しました。掘立柱建物(SH01)は、北西から南東方向へ主軸があり、規模は長さ7.3m、幅3.0mを測り、三本×四本(二軒×三軒)の柱穴を伴います。柱穴は、直径50㎝前後の円形を呈し、中心付近には柱木の痕跡も確認できました。竈状の施設を伴う遺構(SX01)は、西側が調査区外に拡がるため全体の規模は不明ですが、検出状況から一辺3.6mを測る方形の区画と考えられ、南北あるいは東西方向に主軸があります。竈状施設は、西側の壁際中央付近に認められ、被熱し赤色を呈していますが硬化の度合いは弱く感じられます。床面は、複雑に掘り窪められ、不整形の土坑やピットなどが伴い、構築に伴う三日月状の工具の痕跡も複数認められました。土坑は、1基のみ検出し、長軸1.3m、短軸0.9mの楕円形で深さは34㎝です。ピットは、6基確認し、長軸25~60㎝の円形あるいは楕円形になります。風倒木の痕跡は、2基検出し、平面形は三日月状で、埋土は黒褐色系の土で覆われていますが、出土遺物はありませんでした。出土遺物は、非常に少ない量で、須恵器や土師器類などはすべて破片資料に限られました。また、掘立柱建物の柱穴からは拳大の礫も出土しています。
今回の調査で検出した掘立柱建物(SH01)は、総柱で構成される建物であり、唯一遺構の性格を明らかにすることができました。一方、竈状施設を伴う遺構(SX01)は、柱穴の位置を特定することができなかったこともあり、竪穴式住居としての位置付けは保留することにしました。遺構から出土した遺物は、いずれも全体の形状を復元できる状況ではありませんが、概ね6世紀後半から7世紀前半までと考えられます。
掘立柱建物(SH01)全景 北西から
竈状施設を伴う遺構(SX01) 北東から